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株式会社白岩
インフィニット酒ラボ研修&取材旅 【@富山 日本酒蔵&ワイナリー】
2025年5月
🍶『株式会社 白岩』
銘柄「IWA5」を醸す、富山市の蔵
「株式会社 白岩」 2021年秋にできた蔵。
株式会社白岩の最大の特徴はすべての日本酒を「アッサンブラージュ(ブレンド)」していること。
創始者は、28年にわたドン・ぺリニオン5代目 醸造最高責任者をしていたリシャール・ジョフロワ氏です。リシャール氏は1991年にドンペリのプロモーションで来日し、その後100回ほど日本を訪れ日本の食に触れました。その時に様々な料理に合う、世界の人に注目される新しい日本酒をつくりたいと思ったそうです。その後、友人だった建築家の隈研吾氏と日本酒造りに協力してくれそうなパートナー蔵を探します。大手日本酒メーカーにも声をかけたのですが、なかなか興味もってもらえなかったそうです。
そんな中、唯一富山の桝田酒造店5代目当主・桝田隆一郎氏が興味を示してくれたそうです。 そのような流れで、富山で蔵を構えることになりました。
立地は立山連峰を背に、能登半島を見下ろす小高い白岩というところです。銘柄「IWA5」の「IWA(岩)」はその名から来ています。ちなみに「5」という数字は、ただのシンボルで、ハーモニーや調和を意味しています。
蔵の周りには棚田があり、目の前の田んぼでは五百万石を収穫しています。風が強い場所なので、背丈の高い山田錦は難しいとのことでした。無農薬米にも力をいれています。年々農家が減っていて棚田は崩壊の危機、土砂崩れも心配、そんな田んぼや景観も守っていきたいという思いもあるそうです。将来は若い方々と田んぼを一緒に守りたい、田んぼの中にある理想の場所に恵まれたけれど、最後は人と人のつながりが大事とのことでした。
蔵の設計は、もちろん隈氏によるもので、黒を基調とした重厚な建物です。入口を抜けると開放感のあるレセプションルームになっていて、ガラス張りの窓からは外の棚田が目に飛び込んできます。部屋の内側にもガラスが張ってあり、イタリア製のステンレスタンクが32本並んでいるのを眺めることができます。圧巻でした。
なぜイタリアからわざわざ輸入したのか・・・それは美しさを重視したからです。発想そのものがゴージャス。
2021年にエジプトのスエズ運河でコンテナ船が座礁して運河をふさぎ、船舶が通行できなくなった事件によって輸入ができなかったけれど、2022年にやっと整ったとのことでした。
壁には籾殻を混ぜた手すきの五箇山和紙が使われています。トイレは土壁に籾殻がまざっていて、籾殻のムラがまたオシャレ!
レセプションルームは、ロの字の掘りごたつ式で、ホストが中からサービスすることが出来ます。お客様を招いてティスティングをしたり、ディナーイベントをしたり、会議に使います。
白岩が造る銘柄「IWA5」は、シャンパーニュ製造のノウハウがぎっしり詰まっています。日本酒は通常、製造したものを瓶詰めして完成ですが、「IWA5」は、出来た日本酒をリザーブし、それをアッサンブラージュ(調合)していきます。アッサンブラージュを前提に日本酒を造る革新的な酒蔵は他にありません。
とはいえ、ひとつひとつの日本酒にも、しっかりとしたビジョンがあります。すべての酒米は35%~40%(磨きすぎても意味はなく、それ以上だと割れる)まで精米し、数種類の種麹や酵母を使用しています。伝統的な生酛造りを採用するなど、様々なタイプの日本酒を造ります。
リシャール氏は年に3回来日し、50種の日本酒の中から25種ほど絞り込み、バズルのピースのように組み立てていきます。比較的若い日本酒を50~80%使用し、そこに熟成酒(8度で保存)を混ぜ、まろやかさや深い味を出していきます。
「同じものを作るのはつまらない」というリシャール氏の考えに基づき、毎年異なる酒質にしていきます。オーケストラの指揮者のように様々な音をひとつにしていく、緻密に練られた芸術品なのだと、ひしひしと感じました。リシャール氏にしかできない日本酒です。
麹室は2部屋あります。コンクリートにしたことで、湿度もおさえられ、温度ムラないそうです。
種こうじ3種類ほどを使用(内容はここでは秘密)
酒母室も2部屋あり、生酛部屋と速醸部屋を分けています。掃除道具も分けている徹底ぶりです。
ティスティングはヴィンテージ違いをいただきました。お燗で温度の違いも楽しみました。
①2013 メイラードが進んでいるので、色が黄金、香り味わいに深み厚みあり ②2021 上品ながら複雑
家で保存や熟成をするなら、10度以下で保存してほしいそうです。
日本酒としては値段が高めですが、プレステージ日本酒として、洋食や特別な席で楽しんでほしいです。
ブリ・ド・モー(フランスAOPチーズ)との相性が抜群でしたよ。